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January 23, 2005

マジダ・エル・ルーミー

今日また衝動買いをしてしまいました。ふらっと渋谷のCDショップに立ち寄り、民族音楽の棚を覗いたら、あったのです。Magida El Roumi vol. 1 が。

これはレバノンの歌姫マジダ・エル・ルーミーの1977年発売のデビュー盤で、1990年代初めに日本でもオルター・ポップという会社が『恋人よ、連れてって』というタイトルで輸入販売していました。が、私がこのCDのことを知った時には既に遅く、手に入らない状態となっていたのです。その後は輸入盤を置いている大きなCD店でも見かけたことがなく、ならばネットでは、と検索したところ、唯一アメリカのアマゾンのサイトで彼女のアルバムをこれを含めて何枚か扱っているのを見ましたが、何故かいずれも「(アメリカ)国外への販売禁止」の注記がしてあったのです。ただ、マジダのCDは1991年の Words がヴァージン・フランスから出ていて、これは今でも容易に手に入りますが、とりあえずはこれを聴いていたのでした。

それが今日、最近イランのことを書いてることもあってたまたま中東のCDのコーナーを覗いたら、何と国内盤であったのです。『マジダ・エル・ルーミー/レバノンの歌姫登場!』(TS-5104)というタイトルで、オフィス・サンビーニャというところが輸入販売しています。解説の日付が2004年12月24日となってますから出たばかりなのでしょう。更には Words もTS-5039という型番で同じところが発売しているようで、中東音楽ファンにはありがたい快挙ですね。

家に帰って早速聴きます。出だしからいきなりブ厚い派手なストリングス! 来た〜っ、と思わずワクワクゾクゾクしてきます。昔の歌謡曲のような親しみのあるメロディ、やはり戦後の歌謡曲のような歪んでいない「エレキ」の響き、アラブのものらしいパーカッション、次々に変わる曲想、テンポ、ドラマチックな展開、そしてエンディングのテンポルバートでの高音で響かせる小節……うーん、アジアだーっ、と感激してしまうのです。

レバノンの音楽というと一体どんな音楽かと思われる方もいらっしゃるでしょう。レバノンは古代、フェニキアと呼ばれていた時代から東西交通の要衝の地に当り、7世紀にイスラーム世界の拡大によりその勢力下に入るものの、十字軍の遠征によりキリスト教の影響も色濃く受けることになります。その後はオスマントルコの支配下を経て、オスマントルコの崩壊により今度はフランスの統治下に入るなどと、常にヨーロッパ世界とイスラーム世界の狭間でその影響を受けてきた国です。レバノンと言えば今の日本人には内戦、テロ、戦争のイメージが強いでしょうが、地中海に面したこの国は気候もよく、季節によっては海水浴もスキーも同時に楽しめる観光地として、中東のスイスとまで呼ばれていて、ヨーロッパ人もよくヴァカンスに訪れる国だったのです。

そういう国ですから、音楽の世界でも中東の国々の中では最も開けていて(と言ってよいのかどうか)、西洋の楽器や音楽手法をどんどん取り入れ、とてもポップで親しみやすい音楽が発展してきたところです。そしてこの世界で日本でも有名なのがフェイルーズという女性歌手でしょう。このフェイルーズこそラハバーニー兄弟と共にアラブ音楽のポップ化、国際化を進めてきた人でした。私はやはり先のオルター・ポップが輸入販売していた Maarifiti Feek (邦題『愛しきベイルート』)を持っていますが、これは1987年の Maarifiti Feek と1988年の Chat Iskandaria(「アレキサンドリアの浜辺」)とを併せたコンピレーション・アルバムで、Chat Iskandaria の部分は、どうも古い録音で、そのラハバーニー兄弟と一緒にやってた頃らしく、より民族歌謡的な泥臭さが強く、 Maarifiti Feek の方はもう、完璧にジャズというのか、西洋的サロン音楽になってます。邦題のもとになっている "Li Beirut(愛しきベイルート)" のメロディは誰が聴いても「アランフエス」だし……。いや、好きなんですよ。好きなんですけどね……。

今日買って来たマジダ・エル・ルーミーのデビュー盤はその中間を行ってる感じですね。西洋的なアレンジが施されているものの十二分にアジアしてるし、民族的なんだけど親しみやすい、そんな感じです。デビュー当時21歳の若さが溢れてるからでしょうか、曲想がどんどん変わる長い曲を一気に聞かせてくれます。(実は、一番売れたであろう Words は長い曲が多くて飽きてしまうところがあるのです。それでも最後の "Beirut, The Mistress of the World" は圧倒的な迫力で聴かせますが。)

「音楽日記」というタイトルを冠していながら、これまで音楽とは殆ど関係ないことばかり書いてきましたが、今日は久し振りに楽しい音楽体験をしましたので紹介させて戴きました。ご興味のある方は是非早めのご購入をお勧めします。でないと私みたいに10年近く探し続けることになりますから……。

それでは、また。

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