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September 12, 2005

ゾロアスター教と日本(1)〜お盆の起源

久し振りにゾロアスター教の話題について書きます。いつもこのブログを読んで下さっている方から日本でのゾロアスター教の影響について知りたいとのことでしたので、まだまだ不勉強ではありますが、これまで自分が読んだものなどから少し書いてみようと思います。

ゾロアスター教と言えばペルシャの古い宗教ですが、ペルシャと言えばその文物が日本に入ってきていることは皆さんもご存じでしょう。正倉院に収められている白瑠璃碗などはよく教科書などに載っていたりして有名ですね。このような品々でペルシャから物が入ってきたことはわかっているわけですが、それでは人は、そしてゾロアスター教のような精神的なものの流入、影響はあるのでしょうか。こうしたことについて手っ取り早くわかるのが伊藤義教著『ペルシア文化渡来考−シルクロードから飛鳥へ』(ちくま学芸文庫 2001)です。が、この本について書く前に、一般的なところから話していくことにしましょう。

よく言われているのはお盆の行事についてです。「盆」が「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の略であることはよく知られていることですが、これは「盂蘭盆経」という経典に基づいているとされています。そして、この経典の「盂蘭盆」に当るサンスクリット語が「ullambana(ウランバーナ)」であることもまた知られています。この言葉は「逆さ吊り」を意味するものですが、「盂蘭盆経」は目連(もくれん)という人が、自分の母親が地獄で様々な責め苦に遭っているのを目の当たりにし、多くの人々に施しを行なうことで母親の罪が赦され、救われる、という話を扱っているようです。(原典に当ってません。すみません。)

これが日本のお盆にどう関係しているのか、これだけではわかりません。ただ言えることは、「地獄」という概念そのものがゾロアスター教が生み出したものであるということ、そしてそのゾロアスター教の教えでは、地獄に堕ちたものは「逆さ吊り」にされて様々な責め苦に遭う、ということです。とすれば、この「盂蘭盆経」はゾロアスター教的地獄観を表したもの、ということはできます。でもここから日本のお盆の行事が出てきそうにはありません。

そこで、「盂蘭盆」の語源を必ずしも直接的な仏教の世界に求めず、ゾロアスター教に求める考え方が出てきます。かつてインド哲学者の岩本裕さんがゾロアスター教の「urvan」(魂)に求めたことがありました。「ウルヴァン」なら似てますよね。ところがこの世界の権威でもある伊藤義教さんが、「urvan」はアヴェスター語では「ルーワン」と読むことを指摘、更に岩本さんがいや、アヴェスター語ではなくソグド語である、などと論争した話は有名です。

人の死は悲しいものですが、ゾロアスター教では、悲しみは悪魔であるアンラ・マンユが創り出したものであり、死もまたアンラ・マンユの創り出したものでありますから、死を悲しむことはよくないとされていたようです。故人の死を嘆き悲しむのではなく、度々思い出してあげることが故人の魂を喜ばせるとされていたようです。そうしたゾロアスター教時代の習慣がイスラームが国教となった今日も人々の中に残っているのでしょうか、イラン人はよくお墓参りに行くと言われています。故人や先祖を思い出すこと、そしてそのお墓に参って語りかけるということ、その本質はお盆の行事に通じているように思います。

実際、ゾロアスター教では「フラワシ」とか「フラワフル」と呼ばれる守護霊があります。守護霊、というくらいですから、これはもともとは先祖の霊なのですが、時代とともに先程の「ルーワン(魂)」と同一視されていったようです。イランの暦で正月(春分の日)を意味する「ファルヴァルディーン」はもともと「フラワシの月」という意味です。またゾロアスター教の暦で毎月19日はファルヴァルディーン日とされていて、フラワシを祀る日とされています。そして毎年最後の10日間は「フラワルウディーガーン」と呼ばれ、フラワシを祀る特別な期間とされています。

何故特別かというと、この期間、自分たちに縁のあるフラワシたちが一団となってあの世からこの世に戻って来るとされるからです。そして、この霊たちを迎えるために火を焚くのです。ただ先祖を思い出すだけでなく、その先祖たちの霊がたくさん帰って来ること、そしてそのために迎え火を焚くこと、こうなるともうお盆そっくりと言わねばなりません。考えてみれば、お盆には迎え火、送り火、精霊流しなど、火がつきものですが、火と言えばやはりゾロアスター教の影響を感じないではいられません。

それでも、ゾロアスター教では正月、つまり春分にその祭りを行なうのではないか。日本では真夏に行なわれるではないか、という疑問が生じるでしょう。が、実はゾロアスター教の正月はもともと夏至だったらしいのです。とすれば、ますますこのフラワシ祭りと盂蘭盆とは関係ありそう、ということになります。

お盆はいかにも仏教的な行事と思っていましたが、実はゾロアスター教起源のお祭なのかもしれない――と、ここまで書いて思ったよりも長くなってしまったので、今日はこの辺にしておきます。この続きはまた明日。

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Comments

コメントありがとうございました。
楽天にもあったということでリンクさせて
頂きました。読ませていただけたらありがたいです。

Posted by: voielactee | September 13, 2005 09:21 AM

こちらこそありがとうございます!
私もvoielacteeさんのページにリンクさせて戴きました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

Posted by: タンゴ黒猫 | September 15, 2005 11:50 PM

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