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December 12, 2005

『ホツマツタヱ』〜「アワうた」の話

久し振りに「ホツマツタヱ」の話題です。今日は「ホツマツタヱ」と言えばご存じの方も多い「アワのうた」について書いてみようと思います。この「アワのうた」については第5章である「わかのまくらことはのあや」に述べられています。

イサナギとイサナミとがオキツボの地にて国生みをなされたわけですが、それが一段落した時、民衆の言葉がまちまちに乱れていることに気づかれ、これをきちんとしたものに正そうとお考えになり、五七調の「アワうた」をお作りになられたのです。その上(かみ)、つまり前半の24音をイサナギが歌い、下(しも)、つまり後半の24音をイサナミが続いて歌うという形で民衆に教えられたのです。これを歌うことで自然と声もはっきりと出るようになり、体のはたらきも魂のはたらきも、天地自然を構成する48の要素に通じるようになって、民衆は言葉が統一されただけでなく、健康にもなったのでした。これを記念して国の中心となっていた地域の名も「アワの国」と名付けたのです。この成功を受けてイサナギ、イサナミの両神(ふたがみ)は、今度は「ツクシの国」、今の九州に行幸され、橘の木をお植えになりました。橘の木は理想の国、永遠の国である「トコヨの国」の象徴です。このイサナギ、イサナミの意志を受けて、ツクシを治めるカミたちは、この地方の民を平和に治めることとなりました……。

このように、「アワのうた」をイサナギとイサナミとが各地で歌いながら教えていくことで、民が健康にもなり、言葉も統一され、国も安定していったという、何とも素晴らしい話なのです。この背景には、天地自然も、人間の体も48の要素で構成され、48の音韻を正しく発音することで体のはたらきが天地自然に通じ、一つとなるという考えがあったようです。これはいわゆる「言霊(ことだま)」という思想の原点であると言えるでしょう。

もっと言うと、「アワ」という音自体が、「ア」が「天」を表わし、「ワ」が地を表わすわけですから、それは天と地を結ぶ歌なのであり、更に、「アワ」という音が「アウワ」のつづまったものであると考えれば、その「天」と「地」の間にある「ウ」は「人」を表わします。こうして「天と地とその間にある人」とが一つになる歌であると言えます。「ホツマツタヱ」には、この「アウワ」を中心とする世界観があります。これについてはまた別の機会に話しましょう。

さて、そんなに素晴らしい「アワのうた」、一体どんなものなんでしょう。例によって原文はヲシテ(ホツマ文字)によって書かれていますので、今日はカタカナで表記してみます。

アカハナマ イキヒニミウク
フヌムエケ ヘネメオコホノ

モトロソヨ ヲテレセヱツル
スユンチリ シヰタラサヤワ

何とも奇妙な感じに響くかもしれません。どんな意味かと悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。が、今これを五七調の表記でなく、5音ずつ整理してみますと、

アカハナマ
イキヒニミ
ウクフヌム
エケヘネメ
オコホノモ

トロソヨヲ
テレセヱ
ツルスユン
チリシヰ
タラサヤワ

そう、縦に見ていくと、ちゃんと「アイウエオ、カキクケコ」と五十音図が出来上がっているのです。今私たちがよく知っている五十音図と順番こそ違いますし、前半と後半が対称形になるようになっている点も違うといえば違いますが、これは実に音韻の理論に則った構成の歌です。

ところで、上でカタカナで書いたものをもう一度ヲシテ(ホツマ文字)に戻してみましょう。下の図がそれです。(参考までに右側にローマ字で音を並べてみました。)

051212


こうしてみると、何だか不思議な絵文字のように見えていたヲシテも、実は母音を表わす部分と子音を表わす部分でできていることがわかります。円が表わしているのが「ア」の音、下の方が開いた半円が表わしているのが「イ」の音、三角形が「ウ」の音といった具合に母音が示され、これに真ん中に点があるのが「ア」段、1本の縦棒が「カ」段、2本の縦棒が「ハ」段、十字が「ナ」段、といった具合に子音が組み合わされているのです。漢字から生まれたひらがなやカタカナは、単に万葉仮名の略字なので、音韻的な統一性はありません。これに比べ、「ホツマツタヱ」が書かれているヲシテは、非常に規則的で、母音と子音という認識があったことを明瞭に表わしています。「ホツマツタヱ」は後世の人が作った偽書である、と言われていますが、仮にそうであったとしても、このヲシテを発明した人は、そしてその48文字を五十音図のように並べて「アワうた」を作った人は、よほど言語学の知識のあった人であろうと思います。

このことは逆に、ヲシテというものが日本語を実に合理的に表現する文字であるように思われ、私には「ホツマツタヱ」が漢字以前の文献として存在していたことを証明しているように思えるのです。「アワのうた」の物語が語る言葉と人の体、自然との関係といい、先に紹介した「和」の心を持って戦に当たる話といい、そこに表現されているのは、大陸にはない、オリジナルな日本の文化であるように思います。これらの、記紀からカットされた「ホツマツタヱ」の物語をじっくりと研究することから、私たち日本人の魂のルーツを見出すことができるように思うのです。

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