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June 17, 2007

坂井泉水さんのこと

久し振りに衝動買いをした。

仕事の合間に時間が空いたのでCDショップに行ったのだ。見てみたいクラシックやワールドミュージックのCDがあったからだ。が、ここでそのままクラシックやワールドミュージックのCDを買ってきてそれがよかった、というのであればいつものことで何もおもしろいことはない。が、ここで衝動買いしたというのは、CDショップを出ようとしたその時、出口の近くにあった追悼特集のコーナーでのこと。買ったのはそう、『ZARD/Golden Best』、一時はCDショップから消えたというものだ。

日本の音楽界に批判的な私が歌謡曲のCDを買うというのは、一体何年振りのことだろう。恐らく、宇多田ヒカルのファースト『First Love』以来くらいのものではないかと思う。しかし、正直言って、ZARDのことはずっと気になってはいて、ベスト盤くらいは持っていたいと思ってはいたのだ。が、ずっと後回しになっていた。世の中にはまだ聴いたことのない、聴かなければいけない音楽が多過ぎる。

それが、あの日、たまたまニュースを見ていて、ZARDの坂井泉水さんの死去を知らされた。これには何故か大きな衝撃を受けた。え、何、ウソ! 別に特にファンというわけでもなく、ZARDのことを殆ど何も知らないにも拘らず、言いようのないショックだった。

何故、こんなにショックなのだろう? 以来、不思議と、殆どちゃんとまともに聴いたことのないはずのZARDの音楽が頭の中で鳴っている。ふと手にした週刊誌に坂井さんの死についての記事があると読んでいたりする。一体、僕の中で何が起っているのか。こうなるともう、CDを買って聴きまくるしかないのだ。だから、本当は衝動買いではない。僕の心の奥底でずっと気になっていたものが、CDショップの特設コーナーで引き出されただけだ。今はクラシックでもワールドミュージックでもない、この人の音楽を聴きたい——。

『ZARD/Golden Best』2枚組全27曲。27曲もあるのに、その殆どを私のようなテレビも殆ど見ない、流行に疎い人間が聴いたことがある、というのに改めて驚いた。殆どがドラマやアニメやCMのタイアップ曲。CMはともかく、ドラマやアニメを殆ど見ない私が知っているということは、いかにそれがヒットして街中で流れていたかということを物語っている。先程書いたように、ちゃんと聴いたことがないのに、私の頭の中で鳴ってるくらいのインパクトを持っているのだ。

正直、ZARDというのはロックバンドというよりは歌謡曲だと思っていた。CDのジャケットはいつも坂井さんの顔の大写しだし、声もロックボーカルというよりは歌謡曲風だ。でもそれは主に誰にでもわかりやすい日本語の歌詞だからかもしれない。しかし、その日本語の歌詞とメロディとが強力なインパクトを持って胸に飛び込んで来るのだ。これってただの歌謡曲だよね、と思いたくとも、その歌詞に、そうなんだよね、人って、恋ってそうなんだよね、よくこんな歌詞書けるなぁ、と共感している自分がいるのにも気づくのだった。何のことはない、要するに好きなのだ。

坂井泉水さん、行年40歳だったという。何と僕と殆ど変わらない、僕の妹のような年齢(とし)の人だったんだ。解説の文章を読んでいて気づいたのはやはり僕と同じような音楽や映画を経験していて、同じようなものをいいと感じている人だったんだ、ということだ。詞は全部彼女が書いているという。一見、わかりやすそうなその詞には、彼女が生きてきて経験してきた人生の様々が織り込まれていると感じた。正に、彼女の生きる真実がそこにあるからこそ、ただの、作られたよくある歌謡曲の歌とは違うリアリティがZARDの歌にはあるのだ。その意味では、やはりZARDは歌謡曲ではなく、ロックなのだろう。

が、それが歌謡曲的にこれだけ広く人に受け入れられるというのは、どんなに悲しい、辛いことも、あのポップなサウンドで、最後にはハッピーに癒してくれるということにあるからだろう。そう、このベスト盤のCDにしても、27曲聴き終わった後に残るのは幸せな感じ、そして、自分自身の純粋な気持ちなのである。そして、その純粋な気持ちを取り戻せた時こそ、今がどうであろうと、人は先に進むことができる。僕が聴きたいのはそういう音楽なのである。

坂井さんの書く詞には、歌う歌には、そんな、人をハッピーにして、純粋な気持ちにさせて、今いるところから一歩前へ踏み出させてくれる、そんな力がある。人を元気にしてくれる素晴らしい歌の数々だと思う。そんな歌をもっともっと聴きたいと思う。

それだけに、本当に残念だ。人をこれだけ元気にしてくれた坂井さん自身が元気を取り戻さずに、その命を召されてしまったということは。人を幸せにする純粋な魂はいつも早く召されてしまう。何ということだろう。今は僕の頭の中では「君がいない」が鳴っている。CDを聴きながら、坂井泉水さんのご冥福を祈りたいと思う。


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Comments

タンゴ黒猫さん、こんばんわ☆
タンゴ黒猫さんもZARDに反応していたのですね。音楽のジャンルとか売り方とかは色々あるけれど、自分が「好き」と感じた心を大切にしたいですよね。

僕は現在休職中なのですが5/28(月)たまたまお昼にTVを付けていたら「ZARDの坂井さんが亡くなりました…」とニュースが流れて「うそ…?」と身体が固まってしまいました。
それからその日は「えー嘘だろう…」と言いながら過ごしました。著名人が亡くなってこんな気持ちになるのは初めてかもしれません。

ZARDは「マイフレンド」のシングルCD1枚を持っていただけで、知らない曲の方が断然多かったのですが、たまたま坂井さんが同じ歳で同じ街の出身なので「どういう人なのかなぁ???」と関心がありました。
”詞(言葉)がいいなー”とか”ギターのカッティングがいいなー”というレベルで聴いていたのですが全然不思議(?)な人、ちょこちょこYouTubeで聴いたりしていた矢先でした。

それで居ても立ってもいられなかったので、事務所へ記帳に行きました。こんなことは初めてです。事務所には老若男女問わず大勢の方々が来ていて驚き感動しました。最初は記帳だけで帰ろうと思っていたのですが、学校帰りのたくさんの高校生(中学生)がお花を持ってきていたのを見て「俺も献花したい」と感じ、急いで麻布十番のお花やさんに行きました。5月なので「しゃくやく」を買いました。

献花台の前で坂井さんのお写真を拝見したら涙が溢れてどうしようもなかった。なんでこんなに涙があふれるんだろうと、不思議でした。とにかく感謝の気持ちで一杯になり手を合わせて献花しました。

言葉で上手く表現できないのですが、魂と魂は知らない間に出会っているのかな。それも自分の知らない大勢の人々と…。そんな感覚になりました。

そしてCDショップを駆けずり回って収集したZARDの曲を、僕もGoldenBestを毎日聴いています。
坂井さんの言葉が、詞が、優しいメロディーに乗って心に染み透ってきます。もっと人に優しくありたい、もっと生命を大切にしたい、負けないでチャレンジしよう…そんな気持ちが芽生えるばかりです。

ZARDの最後の曲になってしまった「ハートに火をつけて」の詞の最後に「自分で選んだ人生(みち)だもの 後悔しないように… たったひとりの人だから」とありますよね。
まさに坂井さんのラストメッセージになってしまったこの言葉が心に焼き付いています。
そして僕自身もちゃんと”僕の言葉”を表現して生きたい…と。
タンゴ黒猫さん、ブログありがとう☆

Posted by: 三毛猫ニャン♪ | June 18, 2007 at 11:59 PM

三毛猫ニャン♪さん、長い、ご丁寧なコメントありがとうございます。
本当に素晴らしい音楽を残して下さった坂井泉水さん、
ご冥福を祈りたいと思います。

Posted by: タンゴ黒猫 | July 31, 2007 at 11:43 PM

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