さて、私のように曲を創ったり、CDの製作に携わったりしていますと、必然的にその曲やCDのタイトルを考える必要に迫られてきます。昔、ビートルズの曲を知った頃からそうだったのですが、名曲というのはどれもタイトルがいいなぁ、と感心してしまうのです。どこからこんなカッコイイタイトル、或いはロマンティックなタイトルを思いつくんだろう、と。あの人たちはイギリス人やアメリカ人で、英語が母国語なんだから当たり前じゃん、とも思うのですが、必ずしもそうではないのです。彼らだってタイトル選びには考えに考えてるはず。ではそんな時どうしているのでしょうか。
例えば、昔フィフス・ディメンションの「アクエリアス(Aquarius)」という曲が流行りましたが——古い! 年代がバレルぞ!——星の名前をタイトルにするなんてカッコイイなぁ、自分もこれにあやかって星をタイトルにして作りたいなぁ、なんて思ったとします。ところが、他にどんな星や星座の名前があるのか知らなければ、どうにもなりませんね。英和辞典は勿論、和英辞典も殆ど役に立ちません。知っている星座の名前を日本語で一つ一つ引いていたのでは3つ4つ引いたところで疲れてしまいます。できれば、星座の名前がズラッと並んでいるような辞典があれば——。
そういう時に、英米人が必ずと言っていいほど使っているのがシソーラス(thesaurus)という辞典です。これは、概念から求める単語や熟語に辿り着ける辞典、その単語や熟語自体を知らなくても辿り着ける、という辞典なのです。有名なのは「ロジェ」のシソーラス(Roget's Thesaurus)です。
例えば、その目次をめくってみると、まず、あらゆる言葉が次のような大きな概念に分けられています。
第1類 抽象的な関係(Abstract relations)
第2類 空間(Space)
第3類 物質(Matter)
第4類 知性:心のはたらき(Intellect: the excercise of the mind)
第5類 意志:意志のはたらき(Volition: the exercise of the will)
第6類 感情・宗教心・道徳(Emotion, religion and morality)
といった具合です。
この中で、例えば第1類の「抽象的な関係」は更に、
1. 存在(Existence)
2. 関係(Relation)
3. 数量(Quantity)
4. 順序・秩序(Order)
5. 数字(Number)
6. 時間(Time)
7. 変化(Change)
8. 因果関係(Causation)
といった具合に分れています。
今探そうとしている星座の名前、これは星というものの名前ですから、第2類の「物質」を見てみると、
1. 物質一般(Matter in general)
2. 無機物(Inorganic matter)
3. 有機物(Organic matter)
と分れています。「無機物」というのは石とか水とか土、空気、そういったものですね。「有機物」には動物とか植物とか含まれます。面白いのは、ここに有機物である人間が発生させるもの——香りとか音楽とか光や色も入ってることですね。で、星座や星は「物質一般」のところにあります。
319 物質(Materiality)
320 非物質(Immateriality)
321 宇宙(Universe)
322 重力(Gravity)
323 光(Lightness)
この頭の数字が概念番号=インデックスということになります。詳しくはまた後で説明します。で、ここでは「宇宙」のところを見てみると、ありましたありました。「宇宙」に冠する英語が、名詞、形容詞、副詞の順に、ズラズラ〜っと並んでいます。で、名詞は更に
universe(宇宙)
world(世界)
heavens(天空)
star(星)
nebula(星雲)
zodiac(十二宮)
planet(惑星)
meteor(流星)
sun(太陽)
moon(月)
satellite(衛星)
astronomy(天文学)
uranometry(天球図)
cosography(宇宙地理学)
earth sciences(地学)
のグループに分れていて、例えば「アクエリアス(Aquarius)」でしたら「十二宮」のグループに入っていますね。そこにピッタリくるものがなければ前後の項目に視野を広げていろんな星の名前を見ていけばいいわけです。
でもこうやって探していくのは面倒、できれば "Aquarius" から直接このページに辿り着けないか、と思うのも当然です。そこでこのシソーラスにはインデックスもついているので便利です。そこで "Aquarius" を引くと、
Aquarius
zodiac 321 n.
とあります。これは、概念番号321の名詞の "zodiac" のグループを見てください、という意味なのです。これで先程のページに辿り着くことができます。
同じように、例えば、「はじまり」というようなタイトルにしたいと考えたとして、とりあえず思いつく英単語が "beginning" だったとして、"beginning" をインデックスで引いてみると、
beginning
prelude 66 n.
beginning 68 n., adj.
new 126 adj.
primal 127 adj.
youth 130 n.
earliness 135 n.
source 156 n.
とあって、そのニュアンスによって概念番号も異なることがわかります。一口に「はじまり」と言っても、"prelude" なら「序曲」という感じ、"youth" は若いことですから人生のはじまり、"source" は何かの源、ということでしょう。一般的にはやっぱり "beginning" の項を調べることになるのでしょうか。
こんな感じで、自分の知らない言葉を知ることができるのがシソーラスです。ご紹介した英語の Roget's のものはペーパーバックでも何種類か出ていて1,000円程度から買えるので持っておくと便利です。和英辞典に出ているよりも多くの言葉の中から自分にピッタリの言葉を見つけられるからです。(但し、この時、"Roget's II" というのは、辞書形式になっているので、できればここでご紹介したような、概念別の形式になっているものの方がいいと思います。)日本語ではこの分野の辞書があまり充実していないのが残念ですね。最近は少しずつですが出てきてはいますが。
それでは、今日はこの辺で。
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