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March 13, 2008

「ん」の話(2)

昨日は日本語では「ん」の音がひとつの音節を構成していて、それが日本語の特徴であることについて触れたのだけれども、実は「ん」にはもう一つ秘密があります。それは「ん」が表している音を発音記号やアルファベットで表現すると、一つの音ではない、ということです。つまり、「ラ」行の音が「L」にもなり「R」にもなったりするように、「ん」の音にもバリエーションがあるのです。このことを殆どの日本人は気づかずに「ん」を使っているのだけれども、時々その影響がかなの振り方に出て来るので明らかになります。

普通、「ん」の後に何も続かない場合は、実はローマ字で当てられている「n」という子音ではなく、前の母音がそのまま鼻に引っかかった音になります。「さん(三)」とか「ほん(本)」、「パン」などという場合で、ポルトガル語で「São Paulo(サンパウロ)」とか「Lisbõa(リスボン)」という時の「ン」と同じ音です。強いてローマ字で表記すると、それぞれ「saã(さん)」、「hoõ(ほん)」、「paã(パン)」となります。

それから、次の音が「ナ」行や「タ」行など、舌が口蓋に接する音の場合、この時が「n」の音になります。「あんない(案内)」や「かんどう(感動)」という時の音ですね。この時、次の音が母音の場合は、その母音に影響して、続く母音を「ナ」行の音節にしてしまう傾向があります。「音」は普通「オン」と発音しますが、「観音様」という時は、「観(カン)」の「ン」の音が「オン」に影響して「カンノン」という発音になってしまいます。同じように、「王」は「オウ」ですが、「山王神社」という時は「山(サン)」の「ン」が影響して「サンノウ」となります。

私の知合いで「華音」と書いて「カノン」と読ませる人がいます。「観音様」の連想からでしょうが、「音」を「ノン」と読むわけではないのです。前の音が「ン」で終わっているからその影響で「ノン」となっているだけなのです。前の音が「カ」の場合は「音」は「オン」のままですね。まぁ、人の名前や店の名前は視覚と音から来るイメージが大事なのでしょうから、こんなところで国語的、言語学的な分析をしても仕方がないのでしょうが。店の名前と書いたついでに思い出すのが「キャノン」ですが、あれはもともと「観音カメラ」なのだそうで、「観音」をローマ字にした時に「canon」と「n」を重ねずに「カン—オン」となっているのは、逆に、さすがぁ、わかってるぅー、という感じがしますね。

さてもう一つ。「ン」の次に「マ」行、「パ」行、「バ」行など、唇を閉じて発音する音が続く時は、今度は「m」の音になります。「サンマ」や「しんぶん(新聞)」という時の音です。そう言えば、朝日新聞は英語では「The Asahi Shimbun」と表記していますね。

更に更に、「ン」の次に「カ」行、「ガ」行が来る時は、いわゆる「ng」の音になります。「あんがい(案外)」や「はんこ(判子)」という場合です。

このように見てくると、

「さん(三)」
「さんない(三内丸山遺跡)」
「さんま」
「さんかい(三階)」

と、同じように「さん」と書いても全部違う発音なのです。それを全部同じ「ん」という文字が表していて、しかもちゃんと一つの音節を構成している。「ん」はそれだけでは音節を構成できない英語や中国語などの「n」や「ng」の音に比べると、何と豊かで大きな存在なのだろうと思うのです。

携帯メールで「ん」を打てなくなって、その偉大さを改めて知らされたタンゴ黒猫のつぶやきでした。


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March 12, 2008

「ん』の話(1)

携帯が壊れた。水に濡らしてしまって、何とか動いてはいるし、機能もしているが動作が不安定なのだ。早く買い替えないとそのうちデータも拾えなくなるんだろうな。何と言ってもひどかったのが水に濡れた直後で、「0」のキー、つまり「わをん」などを入力すぐキーが反応しなくなったのには参った。しばらく使っているとわかるが、数字だったら「0」を何と多く日頃使っていることか! それから何と多く「ん」という字を使っていることか! どんなメールを打とうとしても、この2つは必ずといっていい程出て来るので、困った困った。とりあえず「0」の方は過去のメールからコピーしてきて「ぜろ」で「0」と「000」を変換できるようにして、「ん」の方は、何とか訓読みがあるものはそれで逃げる——例えば「ほん(本)」は「もと」と入力するようにして——ものの、案外、漢語しかないもの、例えば「かんじる」の「感」などはこれ以外読みようがないので困った困った。

ところで、そんな日が続くと、日頃何とも思っていない「ん」のありがたさがわかるものである。と同時に、「ん」がない頃はやっぱり大変だったんだろうなぁ、と古(いにしえ)の人々の文筆生活に思いを馳せたりするのだ。

というのも、万葉仮名から「ひらがな」「カタカナ」が生まれた当初は「ん」や「ン」の字はなかったのだ。それで、古文では「案内」と書いて「あんない」ではなく「あない」なのですよ、と習うのである。しかし、よくよく考えてみると、「ん」の字がないから「あない」と書くだけで、実際には「あんない」と発音していたのではないか? では逆に、「あんない」と発音していたのなら、何故「ん」の字がないのか?

それは、ひらがなにしてもカタカナにしても元は漢字であり、漢字では「ん」に当たる音である「n」や「ng」はそれだけで音節を構成しないからだ。音節とは、簡単に言ってしまうと、その言語で一音と感じられる音の単位、ということになる。通常は一つの母音を含むのです。例えば「新」という漢字は日本語では「シン」と、2つの音と感じられますが、中国語では「xin(シン)」を1つの音として感じます。(英語でも「sun」は1音節、「サン」とカタカナにすると2音節になります。英語の歌などでついていけない人がいるのは、この1音のところに無理矢理2音入れようとするからです。w)そう、もともと中国語である漢字の場合は、「ン」の音が既に他の音と一緒にくっついて例えば「新」という字の中で表現されているのです。従って、取り立てて「ン」の字を作る必要がない。

これは、あくまでも、万葉仮名なり漢文なり、漢字で文章を書いていた人たちが、結局は当時の中国語文化圏の人たちであったことを表しています。しかし、文字というものが広まっていくにつれ、当然、もともと日本語文化の人たちがそれを利用するようになります。そうすると、音の捉え方が違うので、いろいろと不都合が起こることになります。例えば「ん」がない……。

逆に、前にも書きましたが、万葉仮名では母音の種類が多く、乙類、甲類というものの存在が指摘されていますが、これがひらがなやカタカナになった時に消えてしまったのは何故なのでしょう? それは、中国語文化圏の人たちには、例えばアメリカ人が「ラ」行の「L」と「R」の音はきっちり分ける必要があるのと同じに、やはりこれらの母音を分ける必要があった。のに対し、いわゆるもとから日本語の人たちにとって、それは重要ではなかったのではないでしょうか。だから使わなかった。そして寧ろ「ん」を必要とした……。

実は、漢字以前の文字である「ホツマツタヱ」のヲシテと呼ばれる文字には、ちゃんと「ン」の音があるのです。しかも、何と象徴的な形なのでしょう!

080312

上記のような事情を考えると、ホツマの文字はどの面から見ても、万葉仮名、ひらがな、カタカナ等に比べ、日本語の特質が見事に生かされた体系になっており、その文字体系と思想体系、歴史体系の綿密な一致が、とても一人の人が頭で作り出した産物ではないことを物語っています。ひらがな、カタカナという、漢字文化から見たのではわかりにくい古文の表現、古語の意味も、ヲシテから見て行くと実にすっきりと整理できるのです。

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March 08, 2008

コンピュータは本当に速いのか?

現在システム開発の仕事に携わっていることを以前書きましたが、先日こんなことがありました。

私が開発に携わっているシステムをお客さんに引き渡す前に、今いろいろな人が実際に触ってみてテストを行っているのですが、そのテスト中にエラーが発生したのです。この人がやっていたのは、まぁ簡単に言ってしまうと受けた注文に対して、付随的な情報を追加する処理だったのですが、発生したエラーというのはその情報の追加ができなくなった、ということでした。調べてみると、そのレコード(情報)は既に登録されていて、二重登録はできません、という内容です。

ちょっと面倒な話になりますが、このシステムでは情報を編集してボタンを押すと、その情報がデータベースに記録されるしくみです。そして、データベースで管理する時は、同じものがダブらないようにチェックがかかるのが普通です。例えば、よくある顧客情報のデータベースを考えると、例えば私が商品を注文する度に「タンゴ黒猫」という名前が何度も追加されて、それを元にダイレクトメールが来たりしたのでは、管理する企業としても客の側としても、不便この上ないですね。既に登録されているものは追加できないようにしておいた方が、既に登録されている情報を集中的に管理できて便利です。が、顧客情報の場合は同姓同名ということもあるかもしれません。(まぁ、「タンゴ黒猫」という人は他にはいないだろうけど。w)そこで、例えば名前と生年月日を組み合わせて、同じ組み合わせであれば追加できない、というようにしておくと、同姓同名のお客さんにも対応できます。

今回私のところで起こったエラーも、データベースのそのようなしくみの中で起きました。注文に関する情報ですから、当然申込番号はダブります。そこで、申込番号に加えて、処理した日時を秒単位まで記録し、申込番号と処理時間の組み合わせでその情報を特定するようにしてあったのです。

ところが、このテストした人の処理が速かった。付随的な情報を何件か登録していて、ある情報を編集、登録ボタンを押して次の情報を編集、もう一度登録ボタンを押すまでに1秒かかっていなかった。従って同じ申込番号と処理時間の組み合わせができてしまったのがエラーの原因でした。会社としては、処理時間を秒まででなく、ミリセコンド(千分の1秒!)まで記録することで回避するような対応をとることになるとは思いますが……。

それにしてもこのテストしていた人の処理能力の速いこと。実際、音楽やっていたりスポーツやっていたりすると経験することが多いと思いますが、人間、1秒の間にやれることは多いものです。逆に、コンピュータは、調子がいい時はそれこそ千分の1秒単位で処理するのに、ちょっとでもメモリー不足、ハードディスクの断片化などが起こると、ファイルを開いたりコピーしたりするような単純な作業でも何分も待たせたりしますね。場合によっては人間のスピードに追いついて来れない。今回もそうでしたが、私もよくあるのは、私のキー入力にコンピュータがついて来れなくて、IMEやワープロのソフトが固まってしまうことです。そういう速さの時というのは本当にノッていて、一気に長文を打ったりしてますから、固まってしまうと……。そう、それまで打った文章が全部失われてしまい、泣く思いをします。ゆっくり、落ちないようにコンピュータに気を遣いながらまた入力し直さないといけない。

一体、コンピュータは本当に速いのか。というより、コンピュータは本当に仕事の効率を上げるのに役立っているのか。現状はどうもそうではなさそうです。コンピュータを使う方がある種の処理は早く、正確なのでしょうし、例えば私のように音楽をやる人間だと、私一人でできる以上のことを実現してくれるのも確かです。が、同時に確かなのは、コンピュータが処理を終わるのを待たなければならないということ。どんどん先に進みたいからコンピュータ使っているのにね。コンピュータを待っている時間ほど無駄でイライラするものはないですね。実際、ワードもエクセルも便利そうで、それより何よりウィンドウズOSなんて使っていない会社はないと思うけれども、あれを使うことで生じている無駄な時間というのを計算したら膨大な損失を日本全体、世界全体で生んでいるんではないかと思います。にも拘らず、その会社を訴えることもせず、ただ言いなりになって次々と出される新商品を買い続けているというのは人がいいにもほどがあるのではないでしょうか。もしあなたの仕事がなかなか片付かないとしたら、それはそんなコンピュータを使っているからかもしれません。

どんどん世の中の変化が激しく、仕事に今まで以上のスピードが求められる時代、本当に人間が先へ先へと動くのに役立つ、速いコンピュータ、速いソフトの登場が待たれているように思います。


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