さて、前回は一条と九条について思わず長くなってしまいましたので、今回はその他の気になる条文をさらっと見ていくことに致しましょう。途中大幅に飛ばして、第四十一条です。
Article 41. The Diet shall be the highest organ of state power, and shall be the sole law-making organ of the State.
<私訳——国会は国権の最高機関であり、国の法律を作成、制定する唯一の機関である。>
これもまんまですが、敢て砕いた表現にしてみました。日本文は「国の唯一の立法機関である」ですね。敢てこの文章を引っ張り出して来たのは、「立法」というと難しい言葉だけれども、その実態は中学生でもわかる「law-making」=「法律を作る」ということであり、従って、国会議員の仕事というのは法律を作ることなんですよ、というのを今一度思い出してもらいたかったからです。(実際、アメリカでは議員のことを「law-maker」=「法律を作る人」と表現したりします。)
皆さんは、会期中の、NHKで深夜0時か1時頃放送されている最後のニュースをご覧になったことがあるでしょうか? このニュースの最後に、その日成立した法律を(恐らく)全て紹介し、一言で簡単に解説するコーナーがあるのです。これを見ていると、如何に多くの法律が毎日決まっているかがわかります。じっと見ていると、なるほどー、こういう法律って必要だよねー、と感心するものあり、逆に、何で今更こんな法律作るんだ? と訝しく思うものもあります。こうした細かい法律の一つ一つが私たちの日々の生活や仕事に影響していることを考えると、テレビで大写しに報道される法案だけでなく、こうした細かい法案にも注意しておくべきでしょう。テレビでは大体決まった役者たちがワァワァと騒いでるだけのようで、一体この人たちは何でこんなんで高い給料を貰えるのかと思ったりもしますが、その裏で、地道に法案を一つ一つ作っては成立させているというのもまた事実なのです。
給料のことが出たついでに、第四十九条。
Article 49. Members of both Houses shall receive appropriate annual payment from the national treasury in accordance with law.
<私訳——衆参両院の議員は、法律の規定に従い、国庫から適当な額の年収を受け取る。>
「適当な額」というのはどの位なんでしょうねぇ。随分貰ってるんではないかと思いますが……。その一方で、苦労している議員もいるという話も聞きますよね。日本文は「相当額の歳費」となっていて、何となくたくさんもらえそうなニュアンスがあります。
あと、最近問題になりそうなところで、第八章「地方自治」の第九十五条を見てみましょうか。
Article 95. A special law, applicable only to one local public entity, cannot be enacted by the Diet without the consent of the majority of the voters of the local public entity concerned, obtained in accordance with law.
<私訳——ある一つの地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その関係する地方公共団体の有権者の投票による、過半数の同意なくしては、そのような特別法を国会が制定することはできない。>
国の利益と地方の利益が相反するケースは沖縄などのケースにあるように、これからもどんどん増えていくでしょうね。
で、この地方自治に続くのが、改正の手続についてです。第1項のみ取り上げます。
Article 96. Amendments to this Constitution shall be initiated by the Diet, through a concurring vote of two-thirds or more of all the members of each House and shall thereupon be submitted to the people for ratification, which shall require the affirmative vote of a majority of all votes cast thereon, at a special referendum or at such election as the Diet shall specify.
<私訳——この憲法の改正には、衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成票を得て、国会により動議されなければならず、その後、国民の批准を受けなければならず、それは特別な国民投票、または国会の定める選挙の日に行われる投票に於ける、過半数の賛成票を必要とする。>
出席者の3分の2ではありません。各院の全議員の3分の2以上ですから、これはかなり厳しい条件です。安倍首相は任期中に改正を実現すると言ってますし、民主党側でも対案があるなんて言ってますけれども、今日、中曽根さんがどこかでおっしゃっていたように、本当に真剣に憲法改正を考えるなら、与野党の大連立とか政界再編とか、そういうことを視野に入れないと無理なんではないでしょうか。
最後に、あの崇高な前文に対応する後書きのような、第十章「最高法規」の3つの条文を見ておくことにしましょう。
Article 97. The fundamental human rights by this Constitution guaranteed to the people of Japan are fruits of the age-old struggle of man to be free; they have survived the many exacting tests for durability and are conferred upon this and future generations in trust, to be held for all time inviolate.
<私訳——この憲法が日本国民に保証する基本的人権は人類の長年にわたる自由獲得への闘争の賜物である。これらの権利は多くの厳しい試練に耐え、永久に冒すことのできないものとして現在、及び将来の世代に信託されたものである。>
Article 98. This Constitution shall be the supreme law of the nation and no law, ordinance, imperial rescript or their act of government, or part thereof, contrary to the provisions hereof, shall have legal force or validity.
The treaties concluded by Japan and established laws of nations shall be faithfully observed.
<私訳——この憲法は国の最高法規であり、この憲法の規定と矛盾する如何なる法律、政令、詔勅、或いは政府の行為の全部または一部も、その法的な力、有効性を持ち得ない。
<日本が締結した条約、及び既に確立している国際法については、誠実にこれを遵守する。>
Article 99. The Emperor or the Regent as well as Ministers of State, members of the Diet, judges, and all other public officials have the obligation to respect and uphold this Constitution.
<私訳——天皇または摂政、並びに国務大臣、国会議員、裁判官、そして全ての公務員はこの憲法を尊重し、擁護する義務を負う。>
実は、一番大事なのはこの最後の規定かも知れません。何故なら、この文章の途中で書いたように、この憲法は本来国家権力から国民を守るためのものであり、その憲法を揺るがせにするのはここに挙げられた政府や国会の人たちの可能性があるからです。必ずしも改憲という名目でなくても、この憲法に抵触する動きをしようとしていないか、この憲法が規定する崇高な理想に向かって本当に国の舵取りをしているのか、私たちは真剣に見守る必要があるように思います。